2010年8月3日火曜日

ニーニョ・ホセーレの乗るバス

“LOS ALMENDROS - PLAZA NUEVA”
Cortometraje Duración 23’ Año de producción 2000 España

● Álvaro Alonso dirección ● Encarnación Iglesias guión ● José María Heredia “Josele” direccón artística musical ● Javier López dirección artística ● Juan José Heredia “Niño Josele” música

 ニーニョ・ホセーレの原稿出筆で資料を探していたとき、「あ、あれあれ、あれがあった!」と拳を叩いて引っ張り出してきたのが、彼が音楽を担当した短編映画『ロス・アルメンドロス-プラサ・ヌエバ』(2000年)だった。

 デビューから15年あまりの間に、ホセーレは大活躍を果たした。彼のカンテを包みこむ伴奏は、シガーラの一連のアルバムで。開かれた音楽世界は、ソロアルバムで堪能することができる。けれどこの映画には、彼の原点がある。ホセーレは最後にチラッと出演する。短い演奏だが、それはまさにフラメンコな一瞬だった。

 しかも、最高に楽しい映画!フラメンコ映画は数多くあれど、これほどヒターノのフラメンコを、ひととなりを、鮮明にそして自然な形で語った映画は他にないと思う。まったく、一度でいいから乗ってみたい夢のバスなのだ。
 
 アルメリアのヒターノ地区のど真ん中を走り抜けるバスの運転手“パジョのアントニオ”の目を通して、その乗客たち――アルメリアの照りつける太陽を全身に浴びながら、荒野を駆け巡るバリバリのヒターノたち――の人となりを、ユーモアを散りばめながら語っていく。

 何百年も共存してきた間柄とはいえ、未だに水と油のように弾けあうパジョとヒターノ。世間一般とはかけ離れた“ヒターノの常識”にとまどうアントニオ――それは、時として私自身でもある――だったが、徐々に“乗客たち”の中にフラメンコな心を見出し、惹かれ、そして愛し愛される“パジョのアントニオ”に変っていく。

 年老いたヒターノの叫び。ヒターナたちの人生の賛歌。若い男女が見初め合う瞬間の心の躍動--彼の若々しい敏捷さ、喜びに震える彼女--。そしてアルメリアの土地で生まれ、永遠に止むことのないコンパスが、ニーニョ・ホセーレのギターの音色に乗ってバスを満たしていく。

 彼はパルマを叩く弟と微笑みを交わしながら、父、ホセーレの“気”が高まる瞬間を待つ。その指と弦の間からは、時折パチッパチッとチスパがはじける。そして父はゆっくりと、威厳をもって、彼らの溢れる愛に答える。力の限り歌いながら。

 そこにはフラメンコを分かち合う喜びが溢れていた。
 目頭が熱くなるような家族愛が、3人の心を満たしていた。
 そしてホセーレはその時、「キュン」とするような目をしていた。

* 映画はYoutubeなどで観ることができます。探してみてくださいね!


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